発達クリニックで相談したところ、「学力があるので、普通のクラスにいられるようにしてあげる事が今は一番いい方法だと思います。薬を試されてみてはいかがですか?」と言われました。私はそうなるだろうと思っていたので、ある程度薬の種類や副作用も調べていたのですが、夫に理解してもらいたくて、薬の説明も先生にしてもらいました。パンフレットを見せてもらいながら、詳しく教えてもらいました。どの薬が合うかは飲んでみないと分からない事、合わない薬はいくら飲み続けても効果は出ない事、合う薬であれば2週間以内に効果が出てくる事、3種類の薬が全て合わない場合もある事を聞かされました。病院に行くまでの数日間、薬を飲ませるか飲ませないかで夫婦で揉めていて、夫はイルカくんをまだ発達障害と認めていないので、当然薬も飲ませたくない。「どんな薬かもわからないから怖い」といいながら調べたのか調べてないのか、こんな時ですらゲームばっかり。「怖いならその不安が消えるように先生に沢山質問してください」と言っておいたのですが、結局夫は終始無言。全く会話に入ってこれず、最終的に私が夫に「聞きたい事は無いですか?」と確認したところ、「合う合わないは飲まないと分からないんですか?」と言い出し、さっき先生が言ったばかりですけどと思う質問を一つしただけでした。言い方は悪いですが外面はいいので、発達障害に理解がありますみたいな態度で話しを聞いていました。先生に「どの薬から試すか決まったらいつでも連絡ください。」と言われた時は「分かりました」と返事をしていたのに、帰ってきたらまだ薬を始める事を渋る。「私は先生と全く同じ意見なので薬は試します。副作用が少しでも出たらすぐに中止します。」と夫に伝えたうえで、最初に試したい薬を話した所、薬の種類だけは意見があったので、インチュニブという薬を試す事にしました。ですが、薬を始めるにあたり注意点があり、最初はすごく眠気が出て朝起きられなかったりするのと、体調の変化に気づけるように金曜日の夜から飲み始めて、土日様子を見て大丈夫そうであれば月曜日から学校に行っていいという事だったので、5人での面談の日の夜から薬を始める事にしました。面談までのイルカくんの学校は、「行きたい!」と言っていましたが、結局1週間休ませることにしました。
ですが問題が一つあり、実はイルカくん本人には発達障害だということを教えていなかったんです。教えるべきかずっと悩んでいて、もしこの先何かあるたびに「発達障害だからできなくてもしょうがない」とか逃げ道に使われたらどうしようかと色々考えてしまっていたのですが、薬を飲ませるにはしっかり話さないといけないと思い、先生たちとの話し合いの前に全てを話しました。意外とすんなり納得してくれて、「動きたくなるのはそういうことだったんだね」と言われ、本人も困っていたのかなと切なくなりました。
発達クリニックで相談もでき、薬も飲ませることが決まり、イルカくんも納得し、薬ももらいに行き、あとは5人で話しをするだけ。1週間が立ち、5人での面談が始まりました。
実は発達クリニックの先生に言われた言葉があり、やはり多動が悪化したのは触る物がなくなった事が原因でした。「こういう子は触ってると安心できるから、全部取り上げるんじゃなくて触っていても大丈夫な物を残すやり方がいいですよ」と教えてもらいました。ですがここまで悪化してしまうと、もう触る物が合ったとしても動いてしまうだろうということだったので、薬を飲ませながら、触れる物があればいいなという思いで面談に行ったのですが、先生たちとの話し合いでまず最初に言われた言葉が「他の子と同じようにやって、みんなと一緒の事しようと、強要してしまっていました。すみませんでした。」と担任の先生から謝られてしまいました。特別支援教育コーディーネーターの先生から「イルカくんから色々取り上げてしまっていたものがあると担任から聞きまして」と話しが続き、学校側に責任があると謝られてしまいました。私は誰も責めるつもりはない事、イルカくんの大変さを私が一番知っているので、担任の先生に大変な思いをさせてしまっていて、本当に申し訳ないと思っている事、今日の夜から薬を試してみるが効果が出るかはわからない事、筆箱だけでも触らせといてもらえないかということを話したところ、「一旦全てお返しいたします。もし危ない物を触っていた時だけ注意させてもらうか、一時だけ取り上げてしまう事があるかもしれない」と言うので「それでお願いします。本人にもはさみなどの扱いをもう一度しっかり話します」という事で話しはまとまりました。後はやってみて、問題があれば早い段階で連絡を取り合いましょうという事になりました。30分くらいは話したかと思いますが、夫はというとまた終始無言。最後先生に「そのような形で大丈夫でしょうか?」と確認されて「問題ないです」と答えただけでした。帰りの車の中で、「なんでずっと黙ってたの?」と聞くと「会話に入れなかった。タイミングがわからなかった」と言うんです。当時はそんな事ある?と思っていたのですが、複数人で話している時に会話に入れない。話すタイミングが分からないというのも発達障害の特徴でもあるんだそうです。
私はこの一週間は毎日睡眠時間2時間でした。クリニックで話す事、学校で話す事、息子にどう伝えるか、薬の事、色々考えましたが、一番気を使ったのは夫との話し合い。キレて、「もう行かない!!」とならないように、上手に話しをもっていかないといけないので、頭も神経も使ってこの時は特に疲れました。
面談後からイルカくんは薬を飲み始め、2日間はとても眠たがったのですが、3日目から眠気も落ち着き、1週間で効果が出てきて多動がだいぶ落ち着いてきました。2週間が経過し、副作用もなく順調で、発達クリニックで「相性が良かったみたいだね」と言われ、継続して飲む事になりました。イルカくんに「飲んで変わった事とかある?」と聞いたときに言われたのですが、「僕はいつもモヤモヤしてたの。それがなんだかわからなかったんだけど、薬飲んでからそのモヤモヤが無くなったの。あのモヤモヤは発達障害が原因だったんだね」と笑顔で話してくれました。不思議な事に薬を飲み始めてからイルカくんのイライラが減ったんです。機嫌が悪い。すぐ怒る。そんな状態だったのが、笑顔のイルカくんの時間がとても長くなり、おとなしすぎて薬が効きすぎていないかと心配になる程で、発達障害じゃなかったらイルカくんはこういう子だったのかなと考えたりもしました。インチュニブという薬は、ADHDに効果のある薬なので、イライラを抑える効果はないんです。なのにイライラが減ったということは、イルカくんの言うモヤモヤや、いつもイライラしていた原因は、座っていなきゃいけない事が分かっているのに歩いてしまうとか、理解してはいるけどその通りにできない自分に対してイライラやモヤモヤになっていたのかなと感じました。結局2年生の間は全く立ち歩かないとまではいきませんでしたが、教室から出ていく事は無くなり、たまに立ち歩いてしまってもロッカーの前を何回か往復するとまた席に戻っていくようで、それを許してもらいながら生活していました。
発達障害やグレーゾーンの子にとって、先生との相性やどこまで理解してもらえるかが、生活していくうえでとても重要になってくると感じました。どこを配慮してあげて、どこまでを許してあげて、どこを頑張らせないといけないのか、本当に見極めが難しい所だと思います。そのためにもまずは母親である私が、息子をしっかり理解したうえで、学校や担任の先生としっかり情報共有していくことが、イルカくんが過ごしやすい学校生活になっていけるのではないかと思っています。また、情報共有することで、”家と学校で言ってる事が違う”と混乱しないで済んだり、学校で何か起きた時にすぐに連絡がもらえると、早い段階で対処できるので最悪な事態はかなり避けられると思います。イルカくんが通う学校は、発達障害やグレーゾーン、特別学級の子への理解があり、本当に恵まれた環境にいられていると親子で実感しています。特に3年生の時は、担任の先生が違っていたら、学校に行かなくなっていたかもしれないと思う事が何度もあり、そのお話しも近いうちにしたいと思います。また、発達障害の検査の流れやイルカくんの飲んでいるお薬についても近いうちにお話ししたいと思っています。